なんでも読書 ◆◇◆◆
◆ ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008.06.20
Vol.2633
『一夜の客』
杉本 苑子(すぎもと そのこ)
出版:文春文庫 2001年
定価:530円(税込)
ISBN4-16-722427-5
▲
▲▲
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼
▼
▼
☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
本を選んでおいて言うのも何ですが、今回は杉本は杉
本でも杉本章子を読もうとしたはずなのですが、つい
杉本苑子を手に取ってしまいました。杉本苑子は当り
外れがないと私は思っているせいなのですね。いや、
杉本章子が当り外れがあるというわけでもないのです
が。本書は古代を舞台にした短篇ばかり。七篇収録。
古志老人が腹を痛めてうめいていたとき、通りかかっ
た若い医師佐伯真束が救ってくれた。何もないあばら
屋に医師とその助手を泊めて話を聞くと、彼は唐の国
に近々渡るつもりだと言う・・・・・
「一夜の客」
桑田王子の子を加奈手が産んだ日に、桑田王子は死ん
だ。長屋王の変に巻き込まれて。加奈手は娘桑児を兄
の子として育てることにした・・・・・
「杖」
幼女のころから、花児はひどく愛らしい子だった。た
だ、柿の木から落ちたときから、足が不自由になって
しまった・・・・・
「花児とその兄」
古代が舞台と言っても、登場人物たちの話し方は現代
風。地の文もとくに古風というわけでもありません。
たまたま舞台が古代にしてあるだけのことと思っても
いいようです。ただ、いかにもその当時でなければあ
りえないような、税の出役とか貢物に苦しむ村人の様
子はたしかに古代独特のもの。
『こんな理不尽が、あってよいのか。許されてよいの
か』
「長屋王家が滅亡した日、私は産所で苦しんでいた」
『今日あすのうちに息絶えるじゃろ。なまじ食いもの
など口にしとうはない』
『前生からの宿業だったのであろう』
「笹鳴き」では野垂れ死にしかかっている老婆の、最
後の話を旅人が聞き取るという形で、この残酷さを平
然と記すあたりがまさに現代の語り部。子が母親を裏
切り、その母親が命をかけて子を守る。守るそのやり
方が人道に外れている。そのため死を受け入れる老婆。
この連鎖は、たしかに母親が死ぬことによってしかあ
がなえない。
「花児とその兄」のエンディングは予想外。まさかこ
ういう仕掛けがあろうとは思いもしませんでした。考
えたら「杖」でも似たような仕掛けを主人公にさせて
いるわけなので、こうしたエンディングを予想できた
はずでした。つい主人公に肩入れしすぎました。
あまり明るいエンディングはないですが、最後の「傷
痕」だけは、人間の到達する極致を表し、これは感動
的。
1時間30分
ビフィズス菌顕微鏡で覗いてごらんよ
評価 ★★★★
Sunday, June 22, 2008
激ニガ、ニーム青汁
【PR】アライドアーキテクツで世界に通用するWebサービスを作りませんか?
TOP>健康&医療
2008年02月12日
激ニガ、ニーム青汁
今日は子どもの幼稚園が突然お休み、何の休みなのかさっぱりわからない。
昨日のサラスワティパンチャミの振り替え?
子どもの風邪を貰って、今度は夫がダウン。
私の言うことを聞かないので、ほっといたらかなり酷いことに。
二晩ほどうなされて、熟睡できてない。
昔一度ホメオパシーレメディーをあげたら、
アグラベーション(好転反応の一時的悪化)が起こって、
これはヒット!なんだけど、それ以来、ホメオパシーは病気を悪化させると刷り込まれ、
粒のものは飲まなくなった。
梅醤番茶と味噌汁は身体が欲するらしいので作ってあげた。
身体が酸性になってるのだろう。
風土が違ってもネパール人もこれは効果を実感できるらしい。
昼間はなんとか平気でも夜に発熱する(昼間おとなしく寝ていないから)
のはなんかおかしな病気かも?
と田舎のお父さんに電話して、薬草「ニーム」の生葉を送ってもらった。
輸送方法は、実家の前を通る長距離路線バスの運転手に託して、
名前とバスの番号を控え、カトマンドゥのバス停に受け取りに行くという方法。
宅急便の代わりにいつもこうやって利用する。
お礼に100ルピーくらい渡せば喜んでしてくれる。
電気が来るのをまってから、ニームの葉に水を加えてミキサーにかけ、ざるで漉して青汁に。
葉っぱをかじってみたら、強烈に苦い!
青汁はもっと苦い!
えづきながらでも飲んでた。
今はヒンディー映画をみて笑い転げているからもう大丈夫そう。
確かにこれだけ苦けりゃ相当身体には良いに違いない。
新鮮だし。アーユルベーダの長い歴史もあるし。
ニームは地球を救う大きな可能性を秘めた植物として注目されてきている。
ニームドリンクでも開発してみようか?
TOP>健康&医療
2008年02月12日
激ニガ、ニーム青汁
今日は子どもの幼稚園が突然お休み、何の休みなのかさっぱりわからない。
昨日のサラスワティパンチャミの振り替え?
子どもの風邪を貰って、今度は夫がダウン。
私の言うことを聞かないので、ほっといたらかなり酷いことに。
二晩ほどうなされて、熟睡できてない。
昔一度ホメオパシーレメディーをあげたら、
アグラベーション(好転反応の一時的悪化)が起こって、
これはヒット!なんだけど、それ以来、ホメオパシーは病気を悪化させると刷り込まれ、
粒のものは飲まなくなった。
梅醤番茶と味噌汁は身体が欲するらしいので作ってあげた。
身体が酸性になってるのだろう。
風土が違ってもネパール人もこれは効果を実感できるらしい。
昼間はなんとか平気でも夜に発熱する(昼間おとなしく寝ていないから)
のはなんかおかしな病気かも?
と田舎のお父さんに電話して、薬草「ニーム」の生葉を送ってもらった。
輸送方法は、実家の前を通る長距離路線バスの運転手に託して、
名前とバスの番号を控え、カトマンドゥのバス停に受け取りに行くという方法。
宅急便の代わりにいつもこうやって利用する。
お礼に100ルピーくらい渡せば喜んでしてくれる。
電気が来るのをまってから、ニームの葉に水を加えてミキサーにかけ、ざるで漉して青汁に。
葉っぱをかじってみたら、強烈に苦い!
青汁はもっと苦い!
えづきながらでも飲んでた。
今はヒンディー映画をみて笑い転げているからもう大丈夫そう。
確かにこれだけ苦けりゃ相当身体には良いに違いない。
新鮮だし。アーユルベーダの長い歴史もあるし。
ニームは地球を救う大きな可能性を秘めた植物として注目されてきている。
ニームドリンクでも開発してみようか?
こんな過去がかつて日本にもあったのに。それもすぐ近
なんでも読書 ◆◇◆◆
◆ ◆
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2008.06.22
Vol.2635
『一の糸』
有吉 佐和子(ありよし さわこ)
出版:新潮文庫 2007年
定価:800円(税込)
ISBN978-4-10-113208-2
▲
▲▲
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼
▼
▼
☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
本書は文楽の三味線弾きの名手・露沢徳兵衛を主人公
にした長篇小説。ところが、徳兵衛自身を描くのでは
なく、徳兵衛の後妻に入ることになる、茜という女性
の一代記になっているのです。この辺が、さすがに有
吉佐和子らしいところ。私自身は文楽も義太夫もさっ
ぱりわかりませんが、芸に生き、芸に死んだすさまじ
さをこれくらい痛烈に描いた小説も珍しい。
茜は東京角筈の富裕な商家に生まれた一人娘で、少女
のときに目を患ってしまう。不憫におもう両親は娘の
良縁をさがし見合いをすすめるのだが、父親の急死で
中断する。母親は下田に「みすや」という旅館を開業
する。茜には、少女のころに聞いた文楽の三味線がず
っと耳に響いていた。清太郎(のちの徳兵衛)の三味
線の音である。
やがて目がなおって見た清太郎は美しく、茜はその容
貌に驚くが、胸に深く刻まれるのはむしろ三味線の音。
茜は巡業先の大垣に清太郎を訪ね、抱かれることにな
る。が、清太郎には妻がいた。二人はしばらく離れた
ままになる。そこに偶然がくる。ひとつは清太郎が常
連客に連れられて「みすや」に泊まったこと、もうひ
とつは清太郎の妻が先立ったことである。こうして茜
は清太郎の後妻として嫁ぐのだが、そこには九人もの
子供がいた・・・・・
どうやら、徳兵衛という人物は四代目鶴澤清六がモデ
ルのようです。終盤の文楽界を揺るがせた大事件も実
際にあったことのようですが、まるっきり事実そのま
まかと言うと、いささか虚実入り混じっているようで、
フィクションと思ったほうがいいようです。まあそれ
にしても、真に迫っておりますが。
前半の、茜という大店のお嬢さんぶりには驚きました。
大正時代の、お嬢さんってのはこんなのでしたか。も
うそりゃあ徹底した世間知らず。考えもなしに徳兵衛
に会いに行ってしまうところもそうですが、その日常
すべてが今では信じられないような「お嬢様」。これ
がそのまま年を重ねて行くわけです。お嬢様はいくら
年をとってもお嬢様。
「自分がお嬢さん芸で習っている琴などは十三本の糸
を一時に掻き鳴らしても、あの一の糸一筋には敵わな
いではないか」
『母さま、それじゃ何をしたらいいのよォ。退屈で死
んでしまいそうだわ』
「終戦の前の月まで語り続け、弾き続け、遣り続けて
きたのは文楽の人間だけであった」
『二の糸が切れても、一の糸で二の音を出せば出せる。
そやけども、一の糸が切れたときには』
この徳兵衛というキャラクターがもう今では死滅した
芸人でしょう。こんな芸人いるとは思えません。ある
意味痛烈な「日本人」を描いたとも言えます。世間的
なことは何もできない男なのに、孤高を保ち、ただひ
たすら三味線を弾き続ける。
こんな男をそれこそ一筋に愛しぬく茜。これも稀有な
日本人。というか消え去った日本人像。文楽という狭
い世界を描きながら、なぜだか、哀切極まりない。こ
んな過去がかつて日本にもあったのに。それもすぐ近
くに。
3時間30分
それ以上接近するには金足らず
評価 ★★★★
◆ ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008.06.22
Vol.2635
『一の糸』
有吉 佐和子(ありよし さわこ)
出版:新潮文庫 2007年
定価:800円(税込)
ISBN978-4-10-113208-2
▲
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■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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▼
☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
本書は文楽の三味線弾きの名手・露沢徳兵衛を主人公
にした長篇小説。ところが、徳兵衛自身を描くのでは
なく、徳兵衛の後妻に入ることになる、茜という女性
の一代記になっているのです。この辺が、さすがに有
吉佐和子らしいところ。私自身は文楽も義太夫もさっ
ぱりわかりませんが、芸に生き、芸に死んだすさまじ
さをこれくらい痛烈に描いた小説も珍しい。
茜は東京角筈の富裕な商家に生まれた一人娘で、少女
のときに目を患ってしまう。不憫におもう両親は娘の
良縁をさがし見合いをすすめるのだが、父親の急死で
中断する。母親は下田に「みすや」という旅館を開業
する。茜には、少女のころに聞いた文楽の三味線がず
っと耳に響いていた。清太郎(のちの徳兵衛)の三味
線の音である。
やがて目がなおって見た清太郎は美しく、茜はその容
貌に驚くが、胸に深く刻まれるのはむしろ三味線の音。
茜は巡業先の大垣に清太郎を訪ね、抱かれることにな
る。が、清太郎には妻がいた。二人はしばらく離れた
ままになる。そこに偶然がくる。ひとつは清太郎が常
連客に連れられて「みすや」に泊まったこと、もうひ
とつは清太郎の妻が先立ったことである。こうして茜
は清太郎の後妻として嫁ぐのだが、そこには九人もの
子供がいた・・・・・
どうやら、徳兵衛という人物は四代目鶴澤清六がモデ
ルのようです。終盤の文楽界を揺るがせた大事件も実
際にあったことのようですが、まるっきり事実そのま
まかと言うと、いささか虚実入り混じっているようで、
フィクションと思ったほうがいいようです。まあそれ
にしても、真に迫っておりますが。
前半の、茜という大店のお嬢さんぶりには驚きました。
大正時代の、お嬢さんってのはこんなのでしたか。も
うそりゃあ徹底した世間知らず。考えもなしに徳兵衛
に会いに行ってしまうところもそうですが、その日常
すべてが今では信じられないような「お嬢様」。これ
がそのまま年を重ねて行くわけです。お嬢様はいくら
年をとってもお嬢様。
「自分がお嬢さん芸で習っている琴などは十三本の糸
を一時に掻き鳴らしても、あの一の糸一筋には敵わな
いではないか」
『母さま、それじゃ何をしたらいいのよォ。退屈で死
んでしまいそうだわ』
「終戦の前の月まで語り続け、弾き続け、遣り続けて
きたのは文楽の人間だけであった」
『二の糸が切れても、一の糸で二の音を出せば出せる。
そやけども、一の糸が切れたときには』
この徳兵衛というキャラクターがもう今では死滅した
芸人でしょう。こんな芸人いるとは思えません。ある
意味痛烈な「日本人」を描いたとも言えます。世間的
なことは何もできない男なのに、孤高を保ち、ただひ
たすら三味線を弾き続ける。
こんな男をそれこそ一筋に愛しぬく茜。これも稀有な
日本人。というか消え去った日本人像。文楽という狭
い世界を描きながら、なぜだか、哀切極まりない。こ
んな過去がかつて日本にもあったのに。それもすぐ近
くに。
3時間30分
それ以上接近するには金足らず
評価 ★★★★
Monday, June 16, 2008
イスラム世界を物語で紹介
なんでも読書 ◆◇◆◆
◆ ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008.06.16
Vol.2629
『新 アラビアンナイト』
清水 義範(しみず よしのり)
出版:集英社文庫 2007年
定価:650円(税込)
ISBN978-4-08-746203-6
▲
▲▲
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼
▼
▼
☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
本書は「千夜一夜物語」の翻訳ではなくて、著者がイ
スラム世界を紹介しながら、短篇連作の形式でお話を
つづるという形式になっています。全22話。バステ
ィーシュではなくて、案外まじめな小説。
アイシャは17歳、村のガラス職人のハサンとは結婚
を約束した仲だった。アイシャの織った美しい絨毯が、
王妃の目にとまった・・・・・
「絨毯織りのアイシャの物語」
サラームが16歳になった時、養ってくれた叔父さん
が死んだ。サラームは国で第一の大きな街に着いた。
そこで最後のお金を水パイプに払った・・・・・
「水パイプの中の恋と冒険の物語」
占い師がアリーに、37人目の女こそが妻となって幸
せに結ばれる相手だと言った。一方、アーミナが会っ
た占い師は、最初の男こそ生涯を共にする男だと言う
のだった・・・・・
「運命の恋人に出逢うまでの色の道修行の物語」
題名でみんな語りつくしているようなお話ですね。元
のアラビアンナイトが実際そうですし。思えば、あれ
ほど有名なアラビアンナイト。全部読みきったことは
ありません。一時、挑戦してみたのですが、あまりに
長くて途中で降参。
本書は全部で290ページ。アラビアンナイトのいい
とこ取りです。それにしては、アラジンもシンドバッ
ドも出てきません。もっともこの超有名な物語が出て
くると、たったそれだけで終わってしまいます。
「帯のように見えたのは、海峡を渡る蝶の群だったの
だ」
『ぼくが来たからには、きみを魔鬼なんかに食べさせ
はしない』
『三人を合わせたよりひどい苦しみですと』
『おれは何百年も生きているコウノトリの王だ』
知っているようで知らないイスラム世界の歴史と実情。
それをエッセイ風に書き出しながら、いつの間にか、
小説になってしまう。なかなか洒落た構成です。そう
そう、もとよりアラビアンナイトは、シェヘラザード
が語る不思議な物語という発端になっていたはずです
が、これも本書では割愛されています。むろん、これ
だけでもずいぶん長かったはず。
気楽に読んでいるうちに、イスラム世界の知識が増す。
たとえば、第19話の「摩天楼」のお話など、イエメ
ンに実際にある高層建築のことなのですね。これも、
私は調べてみて初めて知りました。少しずつ読んで、
長く楽しめる本です。
2時間15分
浮気をすると妙に人にやさしい
評価 ★★★★
◆ ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008.06.16
Vol.2629
『新 アラビアンナイト』
清水 義範(しみず よしのり)
出版:集英社文庫 2007年
定価:650円(税込)
ISBN978-4-08-746203-6
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☆★☆..。..。
☆..。
本書は「千夜一夜物語」の翻訳ではなくて、著者がイ
スラム世界を紹介しながら、短篇連作の形式でお話を
つづるという形式になっています。全22話。バステ
ィーシュではなくて、案外まじめな小説。
アイシャは17歳、村のガラス職人のハサンとは結婚
を約束した仲だった。アイシャの織った美しい絨毯が、
王妃の目にとまった・・・・・
「絨毯織りのアイシャの物語」
サラームが16歳になった時、養ってくれた叔父さん
が死んだ。サラームは国で第一の大きな街に着いた。
そこで最後のお金を水パイプに払った・・・・・
「水パイプの中の恋と冒険の物語」
占い師がアリーに、37人目の女こそが妻となって幸
せに結ばれる相手だと言った。一方、アーミナが会っ
た占い師は、最初の男こそ生涯を共にする男だと言う
のだった・・・・・
「運命の恋人に出逢うまでの色の道修行の物語」
題名でみんな語りつくしているようなお話ですね。元
のアラビアンナイトが実際そうですし。思えば、あれ
ほど有名なアラビアンナイト。全部読みきったことは
ありません。一時、挑戦してみたのですが、あまりに
長くて途中で降参。
本書は全部で290ページ。アラビアンナイトのいい
とこ取りです。それにしては、アラジンもシンドバッ
ドも出てきません。もっともこの超有名な物語が出て
くると、たったそれだけで終わってしまいます。
「帯のように見えたのは、海峡を渡る蝶の群だったの
だ」
『ぼくが来たからには、きみを魔鬼なんかに食べさせ
はしない』
『三人を合わせたよりひどい苦しみですと』
『おれは何百年も生きているコウノトリの王だ』
知っているようで知らないイスラム世界の歴史と実情。
それをエッセイ風に書き出しながら、いつの間にか、
小説になってしまう。なかなか洒落た構成です。そう
そう、もとよりアラビアンナイトは、シェヘラザード
が語る不思議な物語という発端になっていたはずです
が、これも本書では割愛されています。むろん、これ
だけでもずいぶん長かったはず。
気楽に読んでいるうちに、イスラム世界の知識が増す。
たとえば、第19話の「摩天楼」のお話など、イエメ
ンに実際にある高層建築のことなのですね。これも、
私は調べてみて初めて知りました。少しずつ読んで、
長く楽しめる本です。
2時間15分
浮気をすると妙に人にやさしい
評価 ★★★★
Wednesday, June 4, 2008
小松左京、中国に宇宙人襲来
◆ ◆
◆◆◇◆ なんでも読書 ◆◇◆◆
◆ ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008.06.03
Vol.2616
『見知らぬ明日』
小松 左京(こまつ さきょう)
出版:ハルキ文庫 1998年
定価:680円(税込)
ISBN4-89456-426-2
▲
▲▲
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
▼
▼
▼
☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
本書は、ある意味タイムリーな読書ではなかろうかと
自賛しています。宇宙人襲来、なんて聞くとそれだけ
で、なあんだ、と思われそうな安っぽいSFのようで
すが、御大小松左京が、そんなくだらないものを書く
はずもありません。本書が書かれたのは、1968年。
中国が国連に加盟しておらず、日中の国交も樹立して
いない時代。あれから40年、四川省の地震への対応
を見るかぎり、中国はそれほど変化していないのでは
と思ったのでした。
中国の奥地の高原で内戦が起きている、というタス通
信の記事から始まった。「いつもの内戦」と無視する
記者が多い中で、山崎記者は興味もって調べ始めた。
内戦にしては戦闘規模が大きいと判断した米軍も本格
調査を始めた。中国は報道規制を行い、何も情報が得
られないまま戦闘はソ連国境まで拡大しつつあった。
山崎は空路でソ連入りを果たそうとするが、飛行機は
戦闘の最前線に不時着してしまった。生き残った記者
が見たのは 地上をうごめく、多数の巨大なドームの
ような物と中国軍の戦闘だった。戦線は、ソ連国境へ
拡大し、米ソは戦略核ミサイルの使用をめぐって、駆
け引きを始めるのだった・・・・・
四川省の地震、いささか報道にタイムラグがあった。
そんなことを、今では問題に誰もしない。隠せるもの
ならなるべく隠しておきたい、という中国当局の意志
が感じられたと思うのは眇めでしょうか。もはや隠し
きれるものではない、とはっきりしてから、大々的に
報道が始まった。これが自然災害だから、まだ報道が
明快だったのではないでしょうか。一例を挙げると、
チベット暴動の報道は、あけっぴろげだとは誰も思っ
ていない。
彼の国は依然として報道管制が敷かれている。40年
前と異なるのは、ネットの存在くらいなもの。そのネ
ットでさえ規制したのを忘れてはなりません。本書で
宇宙人が襲来したのが中国奥地なのが、なんとも皮肉。
『中国奥地で、なにか起っている・・・』
『これは演習ではありません。きわめて大規模な本格
的で、激烈な戦闘です』
「ユーラシア内陸での中ソ衝突が起れば起ったで、米
国はかえって漁夫の利をしめることになる」
「砂塵におおわれているにもかかわらず、それをひと
目見た瞬間、なにかいい知れぬ恐怖と嫌悪が口の中に
こみあげてきた」
文中、「中国首脳は、これはあくまで中国領土内で起
った問題であり、したがって、あくまで中国の国内問
題である、という見解に固執しています」と書かれて
いる。これ、まったく同じ内容を最近聞いた覚えはあ
りませんか。
宇宙人の襲来にしては、宇宙人の姿がまるで見えませ
ん。それというのも、宇宙人がどうのこうのという前
に、もしもこんなパニックが起ったら、国際政治は外
交は軍事はいったいどういう局面を迎えるか、という
のがメインのテーマだからでしょう。その意味では、
「日本沈没」と同じ手法。
それでも著者はまだまだ楽観的な未来シミュレーショ
ンをしているほうで、米ソにこれほど立派な指導者が
いれば幸いですし、中国に革命が起るというのも楽天
的。実際はもっと混沌としてしまうのではないでしょ
うか。壮大なテーマのわりには、小説は短すぎで尻切
れトンボ。小説的には不発ですが、内容はものすごい。
2時間ちょうど
ああ無事に生きているんだ奇跡です
評価 ★★★★
☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
▲ ▲
▲▲ ▲▲
■ ………………………………………………………………………■
▼
▼
▼
________________________________________________________________
評価について
☆☆☆☆☆・・・・・何が何でも読みましょう
★★★★★・・・・・めったに読めない逸品
★★★★・・・・・・なん読お薦め本
★★★・・・・・・・好み次第だけど、平均点以上
★★・・・・・・・・他に本がなければ
★・・・・・・・・・時間のムダを覚悟するなら
▲
▲▲ ご意見ご要望は下記まで
kiriya@ms4.megaegg.ne.jp
バックナンバーは、こちらでご覧になれます。
なん読全リスト
http://www.syuriken.net/nandoku/
まぐまぐ
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000055049
ブログ「kiriya のなんでも日記」
http://blog.goo.ne.jp/nandoku/
なん読ホームページは
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/8907/index.htm
◆◆◇◆ なんでも読書 ◆◇◆◆
◆ ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008.06.03
Vol.2616
『見知らぬ明日』
小松 左京(こまつ さきょう)
出版:ハルキ文庫 1998年
定価:680円(税込)
ISBN4-89456-426-2
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☆★☆..。..。
☆..。
本書は、ある意味タイムリーな読書ではなかろうかと
自賛しています。宇宙人襲来、なんて聞くとそれだけ
で、なあんだ、と思われそうな安っぽいSFのようで
すが、御大小松左京が、そんなくだらないものを書く
はずもありません。本書が書かれたのは、1968年。
中国が国連に加盟しておらず、日中の国交も樹立して
いない時代。あれから40年、四川省の地震への対応
を見るかぎり、中国はそれほど変化していないのでは
と思ったのでした。
中国の奥地の高原で内戦が起きている、というタス通
信の記事から始まった。「いつもの内戦」と無視する
記者が多い中で、山崎記者は興味もって調べ始めた。
内戦にしては戦闘規模が大きいと判断した米軍も本格
調査を始めた。中国は報道規制を行い、何も情報が得
られないまま戦闘はソ連国境まで拡大しつつあった。
山崎は空路でソ連入りを果たそうとするが、飛行機は
戦闘の最前線に不時着してしまった。生き残った記者
が見たのは 地上をうごめく、多数の巨大なドームの
ような物と中国軍の戦闘だった。戦線は、ソ連国境へ
拡大し、米ソは戦略核ミサイルの使用をめぐって、駆
け引きを始めるのだった・・・・・
四川省の地震、いささか報道にタイムラグがあった。
そんなことを、今では問題に誰もしない。隠せるもの
ならなるべく隠しておきたい、という中国当局の意志
が感じられたと思うのは眇めでしょうか。もはや隠し
きれるものではない、とはっきりしてから、大々的に
報道が始まった。これが自然災害だから、まだ報道が
明快だったのではないでしょうか。一例を挙げると、
チベット暴動の報道は、あけっぴろげだとは誰も思っ
ていない。
彼の国は依然として報道管制が敷かれている。40年
前と異なるのは、ネットの存在くらいなもの。そのネ
ットでさえ規制したのを忘れてはなりません。本書で
宇宙人が襲来したのが中国奥地なのが、なんとも皮肉。
『中国奥地で、なにか起っている・・・』
『これは演習ではありません。きわめて大規模な本格
的で、激烈な戦闘です』
「ユーラシア内陸での中ソ衝突が起れば起ったで、米
国はかえって漁夫の利をしめることになる」
「砂塵におおわれているにもかかわらず、それをひと
目見た瞬間、なにかいい知れぬ恐怖と嫌悪が口の中に
こみあげてきた」
文中、「中国首脳は、これはあくまで中国領土内で起
った問題であり、したがって、あくまで中国の国内問
題である、という見解に固執しています」と書かれて
いる。これ、まったく同じ内容を最近聞いた覚えはあ
りませんか。
宇宙人の襲来にしては、宇宙人の姿がまるで見えませ
ん。それというのも、宇宙人がどうのこうのという前
に、もしもこんなパニックが起ったら、国際政治は外
交は軍事はいったいどういう局面を迎えるか、という
のがメインのテーマだからでしょう。その意味では、
「日本沈没」と同じ手法。
それでも著者はまだまだ楽観的な未来シミュレーショ
ンをしているほうで、米ソにこれほど立派な指導者が
いれば幸いですし、中国に革命が起るというのも楽天
的。実際はもっと混沌としてしまうのではないでしょ
うか。壮大なテーマのわりには、小説は短すぎで尻切
れトンボ。小説的には不発ですが、内容はものすごい。
2時間ちょうど
ああ無事に生きているんだ奇跡です
評価 ★★★★
☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
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評価について
☆☆☆☆☆・・・・・何が何でも読みましょう
★★★★★・・・・・めったに読めない逸品
★★★★・・・・・・なん読お薦め本
★★★・・・・・・・好み次第だけど、平均点以上
★★・・・・・・・・他に本がなければ
★・・・・・・・・・時間のムダを覚悟するなら
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