なんでも読書 ◆◇◆◆
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2008.06.20
Vol.2633
『一夜の客』
杉本 苑子(すぎもと そのこ)
出版:文春文庫 2001年
定価:530円(税込)
ISBN4-16-722427-5
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本を選んでおいて言うのも何ですが、今回は杉本は杉
本でも杉本章子を読もうとしたはずなのですが、つい
杉本苑子を手に取ってしまいました。杉本苑子は当り
外れがないと私は思っているせいなのですね。いや、
杉本章子が当り外れがあるというわけでもないのです
が。本書は古代を舞台にした短篇ばかり。七篇収録。
古志老人が腹を痛めてうめいていたとき、通りかかっ
た若い医師佐伯真束が救ってくれた。何もないあばら
屋に医師とその助手を泊めて話を聞くと、彼は唐の国
に近々渡るつもりだと言う・・・・・
「一夜の客」
桑田王子の子を加奈手が産んだ日に、桑田王子は死ん
だ。長屋王の変に巻き込まれて。加奈手は娘桑児を兄
の子として育てることにした・・・・・
「杖」
幼女のころから、花児はひどく愛らしい子だった。た
だ、柿の木から落ちたときから、足が不自由になって
しまった・・・・・
「花児とその兄」
古代が舞台と言っても、登場人物たちの話し方は現代
風。地の文もとくに古風というわけでもありません。
たまたま舞台が古代にしてあるだけのことと思っても
いいようです。ただ、いかにもその当時でなければあ
りえないような、税の出役とか貢物に苦しむ村人の様
子はたしかに古代独特のもの。
『こんな理不尽が、あってよいのか。許されてよいの
か』
「長屋王家が滅亡した日、私は産所で苦しんでいた」
『今日あすのうちに息絶えるじゃろ。なまじ食いもの
など口にしとうはない』
『前生からの宿業だったのであろう』
「笹鳴き」では野垂れ死にしかかっている老婆の、最
後の話を旅人が聞き取るという形で、この残酷さを平
然と記すあたりがまさに現代の語り部。子が母親を裏
切り、その母親が命をかけて子を守る。守るそのやり
方が人道に外れている。そのため死を受け入れる老婆。
この連鎖は、たしかに母親が死ぬことによってしかあ
がなえない。
「花児とその兄」のエンディングは予想外。まさかこ
ういう仕掛けがあろうとは思いもしませんでした。考
えたら「杖」でも似たような仕掛けを主人公にさせて
いるわけなので、こうしたエンディングを予想できた
はずでした。つい主人公に肩入れしすぎました。
あまり明るいエンディングはないですが、最後の「傷
痕」だけは、人間の到達する極致を表し、これは感動
的。
1時間30分
ビフィズス菌顕微鏡で覗いてごらんよ
評価 ★★★★
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