Wednesday, June 4, 2008

小松左京、中国に宇宙人襲来

◆             ◆   
◆◆◇◆  なんでも読書   ◆◇◆◆
◆             ◆
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
2008.06.03
Vol.2616                


『見知らぬ明日』







小松 左京(こまつ さきょう)
出版:ハルキ文庫 1998年
定価:680円(税込)
ISBN4-89456-426-2


▲▲             
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆..。
☆★☆..。..。
☆..。




本書は、ある意味タイムリーな読書ではなかろうかと
自賛しています。宇宙人襲来、なんて聞くとそれだけ
で、なあんだ、と思われそうな安っぽいSFのようで
すが、御大小松左京が、そんなくだらないものを書く
はずもありません。本書が書かれたのは、1968年。
中国が国連に加盟しておらず、日中の国交も樹立して
いない時代。あれから40年、四川省の地震への対応
を見るかぎり、中国はそれほど変化していないのでは
と思ったのでした。

中国の奥地の高原で内戦が起きている、というタス通
信の記事から始まった。「いつもの内戦」と無視する
記者が多い中で、山崎記者は興味もって調べ始めた。
内戦にしては戦闘規模が大きいと判断した米軍も本格
調査を始めた。中国は報道規制を行い、何も情報が得
られないまま戦闘はソ連国境まで拡大しつつあった。

山崎は空路でソ連入りを果たそうとするが、飛行機は
戦闘の最前線に不時着してしまった。生き残った記者
が見たのは 地上をうごめく、多数の巨大なドームの
ような物と中国軍の戦闘だった。戦線は、ソ連国境へ
拡大し、米ソは戦略核ミサイルの使用をめぐって、駆
け引きを始めるのだった・・・・・

四川省の地震、いささか報道にタイムラグがあった。
そんなことを、今では問題に誰もしない。隠せるもの
ならなるべく隠しておきたい、という中国当局の意志
が感じられたと思うのは眇めでしょうか。もはや隠し
きれるものではない、とはっきりしてから、大々的に
報道が始まった。これが自然災害だから、まだ報道が
明快だったのではないでしょうか。一例を挙げると、
チベット暴動の報道は、あけっぴろげだとは誰も思っ
ていない。

彼の国は依然として報道管制が敷かれている。40年
前と異なるのは、ネットの存在くらいなもの。そのネ
ットでさえ規制したのを忘れてはなりません。本書で
宇宙人が襲来したのが中国奥地なのが、なんとも皮肉。

『中国奥地で、なにか起っている・・・』

『これは演習ではありません。きわめて大規模な本格
的で、激烈な戦闘です』

「ユーラシア内陸での中ソ衝突が起れば起ったで、米
国はかえって漁夫の利をしめることになる」

「砂塵におおわれているにもかかわらず、それをひと
目見た瞬間、なにかいい知れぬ恐怖と嫌悪が口の中に
こみあげてきた」

文中、「中国首脳は、これはあくまで中国領土内で起
った問題であり、したがって、あくまで中国の国内問
題である、という見解に固執しています」と書かれて
いる。これ、まったく同じ内容を最近聞いた覚えはあ
りませんか。

宇宙人の襲来にしては、宇宙人の姿がまるで見えませ
ん。それというのも、宇宙人がどうのこうのという前
に、もしもこんなパニックが起ったら、国際政治は外
交は軍事はいったいどういう局面を迎えるか、という
のがメインのテーマだからでしょう。その意味では、
「日本沈没」と同じ手法。

それでも著者はまだまだ楽観的な未来シミュレーショ
ンをしているほうで、米ソにこれほど立派な指導者が
いれば幸いですし、中国に革命が起るというのも楽天
的。実際はもっと混沌としてしまうのではないでしょ
うか。壮大なテーマのわりには、小説は短すぎで尻切
れトンボ。小説的には不発ですが、内容はものすごい。

2時間ちょうど


ああ無事に生きているんだ奇跡です


評価  ★★★★




☆..。
☆★☆..。..。
☆..。
▲ ▲
▲▲                           ▲▲
■ ………………………………………………………………………■





________________________________________________________________

評価について

☆☆☆☆☆・・・・・何が何でも読みましょう
★★★★★・・・・・めったに読めない逸品       
★★★★・・・・・・なん読お薦め本      
★★★・・・・・・・好み次第だけど、平均点以上     
★★・・・・・・・・他に本がなければ         
★・・・・・・・・・時間のムダを覚悟するなら           


▲    
▲▲  ご意見ご要望は下記まで
kiriya@ms4.megaegg.ne.jp

バックナンバーは、こちらでご覧になれます。

なん読全リスト
http://www.syuriken.net/nandoku/

まぐまぐ
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000055049

ブログ「kiriya のなんでも日記」
http://blog.goo.ne.jp/nandoku/

なん読ホームページは

http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/8907/index.htm

No comments: